原子力システム研究開発事業

平成18年度採択課題事後評価の結果

原子力システム研究開発事業 −基礎研究開発分野−
若手対象型 事後評価結果

研究開発課題名:低除染酸化物燃料サイクルの成立を指向した多元系燃料の物性研究
代表研究者(研究機関名):黒崎 健(国立大学法人大阪大学)
研究期間及び予算額:平成 18年度〜平成 20年度( 3年計画)  29,245千円
項目 要約
1.事後評価 (目標達成度、研究開発計画、成果等)
【目標の立て方】
  • 次世代高速炉サイクルシステムで期待できる低除染酸化物燃料の基礎物性値という基盤的データの取得にかかわるもので、目標も明確であり、研究は、模擬燃料製造評価、実燃料評価を、いくつかの観点から実験的に詳細に試験評価しており適切であった。
【研究開発計画】
  • 模擬燃料、実燃料、照射済燃料の3種類の試料を用いた多面的なアプローチが計画されており、実験的手法を主体に基礎的物性評価を目指したことは適切であったといえる。しかし、基礎物性に関する測定項目については、もう少し広範囲にカバーしておく事が必要であったと思われる。
  • 模擬燃料の作製が3組成1条件であったことは、実際の燃料に対する模擬性を評価する上では少なかった。
  • 大学と日本原子力研究開発機構と十分連携を取り研究が進められたと考えられる。
【目標達成度】
  • 模擬燃料の相状態と基礎物性,実燃料の作成と相状態と物性評価いずれも当初の想定した計画に沿って確実に実施され、有用な実験データが得られたと評価できる。しかし、低除染化の直接的な影響については、明確に示されたと言えるところにまでは至らなかった。
【研究開発成果】
  • 物性値データの不足が指摘されている低除染燃料について、実際に150GWd/tの使用済燃料試料の評価を行うなど、照射効果も含めてデータ補強がなされたことから、大きな成果が得られたと評価できる。
  • 計算による多成分系の熱伝導率の評価等新しい試みもなされ、多数出されている評価式の燃料設計への適用性についての検討は少ない。今後、これまでに得られた高燃焼度使用済み核燃料の観察結果を基に、模擬燃料を使った評価モデル・評価式の妥当性の検証を進めてもらいたい。
  • 精力的に外部発表等が行われていることは評価できる。
【研究開発の波及効果】
  • 低除染燃料の照射挙動や物性値は将来の燃料サイクルにおいて本質的に重要なテーマであることから、「低除染燃料に初期の含まれる少量のFP元素による燃料のパフォーマンス上の影響」などについて実験的な確認により得られた成果を踏まえ、今後もデータベースの一層の充実に努めてもらいたい。
2.総合評価
 評価:A
  • 次世代高速炉サイクルシステムで期待できる低除染酸化物燃料の基礎物性の評価として、模擬燃料の作製と評価、MA入り燃料の作製と評価、および使用済燃料の評価をいくつかの観点から実験的に詳細に実施した結果、今後の燃料開発のデータベースとなる貴重なデータが得られている。さらに、評価モデル・評価式等の副次的な評価手法も得るなど、当初の想定を超えた成果が得られ、今後の展開が大いに期待できる。
  • 作製したPu、Amを含む貴重な実燃料ペレットについては、物性値として熱伝導率等に止まらず、今後、より広範囲に物性データを取得されるよう期待する。また、従来の高除染MOX燃料との比較で低除染化したことの各種物性への影響の有無・程度についてもさらに突っ込んだ評価をしてもらいたい。
  • POとの連携、口頭発表、海外での発表、論文化、得られた知見のまとめ方、いずれも優れており、査読付き論文を含む情報発信を積極的に行っている点は評価できる。
3.その他 なし

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