研究分野

令和元年度 国家課題対応型研究開発推進事業 原子力システム研究開発事業 選定課題

安全基盤技術研究開発:計3課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
1 次世代原子力システム用事故耐性被覆管の照射特性評価技術の開発 大塚 智史
[日本原子力研究開発機構]
九州大学、北海道大学、東北大学 酸化物分散強化型(ODS)鋼被覆管は、Na冷却型高速炉(SFR)燃料の高燃焼度化や高温プラント運転による経済性向上を主目的として開発された材料であるが、高温から超高温に渡る範囲での優れた破損抵抗性および形状安定性から、燃料安全性の向上にも有効である。このODS鋼被覆管をSFR燃料被覆管に適用することで、事故時超高温環境での燃料破損の抑止または燃料破損までの時間的な裕度を確保することが可能となる。この優れた事故耐性を有するODS鋼被覆管を実機に適用するためには、その照射性能を正確に把握し、燃料要素設計に反映させる必要がある。本事業では、最新の材料科学に関わる知見を最大限活用し、ODS鋼の照射性能を合理的かつ効率的に把握するための新たな評価手法の開発を行う。
2 高速炉における炉心損傷事故の発生を防止する受動的炉停止デバイスの開発 守田 幸路
[九州大学]
福井大学、東京都市大学、日本原子力研究開発機構、東京工業大学 福島原子力発電所の事故以降、設計基準事故を超えたシビアアクシデントを含む設計拡張状態を考慮することが求められており、その発生防止方策を原子炉の設計上考慮することが重要となっている。本研究では、高速炉の炉心損傷事故の発生防止に関する設計対策として提案する、集合体形の受動的炉停止デバイスの工学的な成立性について検討する。一部の燃料集合体に置き換えて装荷する本デバイスは、深層防護の第4層における受動炉停止機構として、事故時にピン内で液相化した燃料を反応度価値の低い領域に移動させることで未臨界状態を維持し炉心損傷を防止する。本研究では、デバイスに用いる燃料の候補材、事故時の燃料移動を実現するピン構造、デバイス動作時の核・熱流動特性等の観点から総合的に検討を行い、本受動的炉停止デバイスの実現性を示す。
3 ハニカム冷却技術による超臨界圧軽水炉のIVR確立 森 昌司
[九州大学]
東京大学、電気通信大学 申請者らは、実機条件を模擬した放射線照射下において沸騰冷却の限界性能が⼤幅に低下することを発⾒した(H26-H28 原⼦⼒イニシアティブの研究成果)。これが実機で起こる場合、炉⼼溶融などの過酷事故時の安全防護策として開発されているIVR 技術(原⼦炉容器をプール⽔中に丸ごと⽔没させ外部冷却する⼿法)の成⽴性に⼤きな影響を与える。そこで本申請課題では、放射線照射効果が沸騰冷却の限界低下に与える効果を検討し、その冷却性能低下を阻⽌する⼿法を開発する。さらに⾰新的なハニカム冷却⼿法を導⼊することで、実機条件を模擬した放射線照射下においても超臨界圧軽⽔炉のIVR の限界性能の低下を阻⽌するどころか、⾶躍的に向上させる⼿法を開発する。

放射性廃棄物減容・有害度低減技術研究開発:計3課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
1 マイナーアクチニド含有低除染燃料による高速炉リサイクルの実証研究 加藤 正人
[日本原子力研究開発機構]
福井大学、九州大学 マイナーアクチニド含有低除染燃料を用いた高速炉リサイクル技術を実証することによって放射性廃棄物減容・有害度低減を達成する。高速炉燃料の再処理・MA 回収によって得られたフィードストック原料を用いて、Np、Am、Cm とFPを含む多元系燃料を研究対象とする。燃料の通常時の健全性及び過渡時の安全性を評価し、燃料性能を検証するために必要な6 つの研究課題(①フィードストック原料を用いた原料粉末の調製、②遠隔燃料製造技術、③MA 含有MOX燃料の基礎物性データベースと燃料設計、④分析技術開発とMA の核変換評価、⑤PIE 技術開発及び⑥TREAT による過渡照射試験)を通して、高速炉MA リサイクル実証のための主要な燃料技術を開発する。本研究には、フィードストック原料を実際に用いた研究や照射済MOX 燃料の過渡試験を含んでおり、原料調製から照射試験のすべての燃料技術について実燃料を用いた研究開発を実施する。
2 FFAG陽子加速器を用いたADS用核データの実験的研究 岩元 大樹
[日本原子力研究開発機構]
京都大学 加速器駆動核変換システム(ADS)では、GeV領域陽子と鉛・ビスマス標的との核反応で発生する核破砕中性子を用い、高レベル放射性廃棄物中のマイナーアクチノイド(MA)を核分裂反応させることにより、その有害度を低減させる。ADSの技術的課題に、核破砕中性子収量の予測精度向上および高エネルギー核分裂で発生する核分裂片の分布の解明が挙げられる。ADSでは、様々なエネルギー領域の核反応が核破砕中性子、核分裂中性子および核分裂片の発生に関与するが、現状では入射エネルギー100MeV以下における核破砕反応及び高エネルギー核分裂データの不足が、核反応計算モデルによるADS核特性予測の信頼性評価を困難にしている。そこで本研究では、京都大学固定磁場強集束(FFAG)陽子加速器を用いて、このエネルギー領域における原子番号70を超える重核種に対する陽子入射核破砕中性子収量と高エネルギー核分裂に関する核データを測定し、核反応モデルを高度化することにより、ADSの早期実現に資する。
3 廃棄物処分の環境影響を基点とした原子力システム研究 朝野 英一
[原子力環境整備促進・資金管理センター]
東京工業大学、日本原子力研究開発機構、北海道大学 発電システムと燃料サイクルに分離変換技術を組込むことにより高レベル放射性廃棄物の物量と放射能が削減された環境負荷低減型地層処分が実現する。本研究では、処分場の大幅な小型化(面積削減)に繋がる原子力システムについて、廃棄物処分における環境影響の定量的な評価を行い、評価指標の導出を試みる。また、高燃焼度化、MOX 燃料利用、使用済燃料貯蔵期間の長期化などを念頭に、核種分離の効果的、現実的なプロセスを提示する。MA リサイクルを行う高速炉については、核種分離などの前提条件を幅広、網羅的に考慮する燃焼計算モデルの高度化を目指す。研究を通じた燃料サイクル諸量の予測、確認は国際的汎用計算コードにより行う。
この様な分野横断型研究手法の構築は、CO2 排出量削減の下で再生可能エネルギーと共存、協働し、且つ新型炉の導入を含めた未来型原子力システムの廃棄物を基点とする最適化やオプション研究の準備となる。なお本研究の分離対象核種は発熱と毒性の2 点からAm とする。
ページトップ