原子力システム研究開発事業
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成果報告会開催

原子力システム 研究開発事業 成果報告会資料集

原子力技術開発と国際協力・国際競争

財団法人エネルギー総合工学研究所 理事 松井一秋

 もともと原子力開発と国際協力、国際競争は切っても切れない縁がある。原子核の分裂で莫大なエネルギーの放出の可能性がドイツを中心とする欧州の物理学者の間で認識され、それが不幸なことに原子爆弾の開発につながり、その情報は旧ソ連などに流出して核兵器開発競争となってしまった。一方、アイゼンハウアー米国大統領による「平和のための原子力」提案(1953年)はアメリカ人らしい極めて理想主義的なものであるが、原子力の平和利用技術を世界全体で共有していこうというものである。実際途上国を中心に多くの実験炉とその核燃料が提供された。

 エネルギー総合工学研究所の歴史(1978年創立)の中で、やはりその出自からして原子力は重きをなしてきたわけであり、初めて主催した国際会議も原子力のテーマ、高速増殖炉であった。(IAE International Symposium on LMFBR Development, 1984年11月6日から9日。)当時はわが国の高速原型炉もんじゅが建設に入ったばかりでかつフランスの実証炉スーパーフェニックスの臨界を翌年に控え、欧州統一高速炉ということで独仏英がしのぎを削っていた時代で、今から見ると隔世の感がある。(プロシーディングス表紙の「常陽」はわが国の大洗にある高速実験炉、不死鳥すなわちフェニックス。南仏、マルクールにある原型炉「フェニックス」はそろそろ退役するが、実証炉「スーパーフェニックス」は臨界、全出力に到達したものの、その後停止、廃炉にかかっている。)
 さて、続いて紹介すべきは第4世代国際原子力システム開発(Generation IV、Generation IV International Forum/GIF)であり、前述の国際会議とは時間的もなにもつながりはないのだが同じく高速炉を中心とする新型炉の国際技術開発協力の試みである。2000年1月雪のワシントンで開かれた国際ワークショップでは今日のGIFの母体となる国々の代表が集まり、次のような論がなされ共同声明を作成した。
 「今後50年内に途上国中心に大幅な電力需要増加が見込まれ,現状60億の世界人口のうち約20億人は電力の恩恵に浴していない事実と,一方で大気汚染(SOxやNOx等)と温室効果ガス(炭酸ガスやメタン等)放出への懸念について合意した。
 現在,原子力は世界の17%の電力を供給しており,将来も主要なクリーンエネルギーとしての便益をもたらす。 現在稼働中の『第3世代』原子力は,今後数十年にわたり主要な役割を果すと期待されるが,さらなる利用拡大のためには経済性などの向上が望まれる。各国政府は以下の条件を満たして『第4世代』原子力技術の進歩を推進すべきである。
・ 長期的な研究開発・実証
・ 廃棄物問題の解決
・ 人的ならびに技術的なインフラの整備
・ 21世紀に対応する効果的な原子力規制の保証
 第4世代原子力システムは将来の選択肢として,工業国ならびに途上国,適宜国際機関からなる多国間ベースの研究として実施すべきである。」
 2001年7月17日,わが国とブラジル,カナダ,韓国,フランス,英国,米国,アルゼンチン,南アフリカの9カ国は,国際フォーラム( GIF: Generation IV International Forum)の設立憲章に署名した。(第1世代からの絵)
 「第4世代」として向かうべき方向についての議論に基づき米国エネルギー省(DOE)はGIF加盟国の協力を得て「第4世代」候補の公募を行った。世界12カ国から約100のコンセプトが提案され、半数は米国だったが,実に全体の2割は日本からの提案であった。炉型別のコンセプトとしては,液体金属冷却炉,すなわち高速炉が全体の3分の1,水冷却炉が3割を占め,残りをガス冷却炉と溶融塩炉などの非古典炉が占めた。(炉型の分布図)
 当研究所は,高速炉の比較的高エネルギーの中性子を使って,マイナーアクチニドや超長寿命核分裂生成核種を破砕し,できるだけ廃棄物を系外に出さないシステム―「自己完結型原子力システム(SCNES)」―を永年にわたり研究してきたこともあり,同システムを「第4世代」候補として共同提案した。いわゆる分離・消滅処理を高速炉システムに組み込むもので、結局は現在のGIFの主概念を形成することとなっている。なお当研究所は2000年以来このGIFの形成、目標の設定、候補の選定などについて、主要メンバーとして貢献してきている。

 GIFにおいては次の6概念を第4世代候補として選択しているが、システムレベルで資源エネルギー庁が参加している超臨界圧水炉の研究開発レベルでは、当研究所はわが国の産業、大学と研究機関のとりまとめとして機能することが期待されている。(6コンセプト)

 「第4世代」原子力開発の中でわが国がいかに主体性を保ちつつ,国内のエネルギー・環境問題の緩和のみならず国際的な貢献を果たしていくか大きな課題といえる。わが国に対しては,高い経済性と安全性を有し,熱利用等の多様なエネルギー供給や原子炉利用の普及に適した革新的な原子炉が期待されており,国際協力の下で次世代原子炉の開発と導入に関する議論を深めることは,大変有意義であると認識している。

 米国における原子力研究開発の復活は1999年からのNERI、いわゆる提案公募事業、から始まり、「第4世代」、「原子力発電2010」、「先進燃料サイクル」と続いてきた。実態として米国が原子力技術開発に戻ってくることは大歓迎だが,高速炉を中核とする国際核燃料サイクルの確立を主軸とする現在の米国のGNEP構想(Global Nuclear Energy Partnership)の道のりは平坦ではなさそうである。しかしそのなかには途上国市場向けの中小型炉の共同研究も含まれている。

 欧州においては、エネルギー効率の改善と低炭素社会を目標とする「エネルギー行動計画」が2007年に採択され、そのもとに「戦略的エネルギー技術」プランを策定することになっている。その中で、水素・燃料電池やバイオ燃料技術とも連携する「サステナブル原子力エネルギー」技術プラットフォームと称する各国ならびにEU全体の研究開発と産業界の協力などの統合的な仕組みを議論している。

 他方,わが国においては国益を中心にすえ,さらに極東ならびにアジア地域の安定を含めた国際的観点から中長期的なわが国の原子力技術開発はどうあるべきかという議論が透明性とアカウンタビリティを確保しつつなされる必要がある。「原子力立国計画」(2006年8月)は「新・国家エネルギー戦略」(2006年5月策定)、「エネルギー基本計画」(2007年3月閣議決定)の一部を構成している。原子力立国計画の一環として次世代軽水炉開発(平成20年度から8年計画)や核燃料サイクル技術開発が位置づけられる。これらは、いわゆる世界標準的な原子力システムを目標として,わが国がこれまでに投資してきた原子力技術の競争力を,地球環境のためにも大きな市場を作り出すリーダーシップを発揮する場であらねばならぬ。
Japan Science and Technology Agency
原子力システム研究開発事業 原子力業務室