原子力システム研究開発事業
HOME研究成果成果報告会開催目次>不確実性を考慮した原子力システム研究開発評価法に関する研究
成果報告会開催

原子力システム 研究開発事業 成果報告会資料集

不確実性を考慮した原子力システム研究開発評価法に関する研究

(受託者) 独立行政法人日本原子力研究開発機構
(研究代表者)塩谷洋樹 次世代原子力システム研究開発部門 研究員

1.研究開発の背景とねらい

 本事業では、今後の次世代原子力システム(FBRサイクルシステムを想定)の実用化に向けた研究開発を進める上で重要なポイントである不確実性を考慮した研究開発マネジメントについて研究するものである。研究開発と導入効果に影響を与える不確実性因子を明確にし、次世代原子力システムを導入したときの各国における社会経済的影響について、不確実性を考慮した上で評価する手法を開発する。さらに、上記の評価結果を活用して原子力システムの研究開発をマネジメントする手法を提案する。
 例えば、下記を考慮可能な次世代原子力システムの研究開発のマネジメント手法を検討する。
 (1)社会的な不確実性(例:温暖化ガス制約、資源価格上昇、市場のリスク、割引率等)
 (2)技術的な不確実性(例:廃棄物関連制約、核不拡散関連制約、安全面の問題等)
 (3)研究開発の不確実性(例:研究開発の遅延・失敗に起因する性能影響等)
 (4)国際戦略上の不確実性
 主に(1)に対応するため、社会的な不確実性によるFBRサイクルへの影響を考慮可能な動学的応用一般均衡モデルを開発する。(2)に対応するため、別途開発中の特性評価手法(経済性の不確実性評価手法、サプライチェーンマネジメント評価手法等)を適切にマネジメントする手法についても検討する。(3)に対応するため、原子力システム研究開発に関する情報を構造化し、戦略的意思決定を効率的・効果的に管理する手法を検討する。(4)に対応するため、各国の研究開発と次世代原子力システム導入効果等を考慮し、わが国の国際戦略を検討する手法を検討する。

2.研究開発成果

 GTAP[1]などの応用一般均衡モデルは市場経済全体の動きを評価することで、例えばFBR導入による社会全体への影響を波及効果も含めて評価可能という利点を持つが、時系列評価ができないという難点がある。平成18年度には、GDP、人口、エネルギー価格に関する長期のシナリオを主な入力条件として、制約条件を反映しつつ国際的な投資、資本移動の変化を評価するモデルを追加した。これにより、消費者需要や内部セクター要素の時間変化などを表現でき、投資行動や資本の外国所有の時間変化を評価する動学モデル化を行なった(図1参照)。
 また、従来のGTAPで扱う産業は電力部門、鉄鋼業、農業、サービス業のように分類され、電力部門はひとまとめにされていたが、FBRサイクルの評価を可能とするため、電力部門をFBR を含めて7 種類の発電技術毎に細分化した。さらに、プルトニウムバランスや負荷追従といった電力関連制約も検討し、その一部を実装した。その結果、FBR のような新規発電技術導入による発電コスト変化に基づく社会経済的影響を評価可能となった。平成18年度のモデルと前提条件を用い、世界各国へのFBRサイクル導入を想定して試算したところ、GDPを向上させる効果が、わが国では約45兆円、世界全体では約495兆円に達した。
 他にも、わが国と主要国のFBRサイクル研究開発計画を調査して研究開発に関連する情報を整理し、様々な評価情報と合わせて検討して、例えば研究開発課題間の関連性を表現し、本事業に必要な多くの情報をマネジメントできるデータベース概念[2]を検討した。他に国際戦略の評価手法についての調査・検討を行ない、ゲーム理論や複雑系評価手法を活用することで、国際戦略を分析できる見通しを得た。また、技術経営手法の調査に基づき、研究開発資源を最小限に留めつつ、研究開発から得られる情報・知識を活用して研究開発をマネジメントするDDP計画法[3]を応用することで、研究開発計画を管理していく手法を提案した。

3.今後の展望

 今後は、従来成果を踏まえ、さらにCO2回収・貯留技術や代替燃料技術の導入による影響を評価可能なように動学的応用一般均衡モデルの改良を進める。また、研究開発プロセスを考慮した次世代原子力システムのコスト面を中心とする不確実性の評価結果を基に、エネルギー経済モデルを活用して社会・環境面の不確実性を評価した上で、国際協力・競合の要素を加味した戦略分析を実施することによって、研究開発マネジメントに必要な情報を得る仕組みを構築する。また、それらの情報を基に一貫して研究開発をマネジメントする手法(図2参照)を構築する予定である。特に評価関連情報を管理・運用する基盤となる評価知識マネジメントシステム(仮称:図3参照)の具体化を進める。

4.参考文献

[1]Betina V. Dimaranan, Global Trade, Assistance, and Production: The GTAP 6 Data Base, Center for Global Trade Analysis, Purdue University, 2006.
[2]大澤幸生、「知識マネジメント」、オーム社、2003.
[3]リタ・マグレイス、イアン・マクミラン著、大江建監訳、社内起業研究会訳、「アントレプレナーの戦略思考技術」、ダイヤモンド社、2002.
Japan Science and Technology Agency
原子力システム研究開発事業 原子力業務室