研究分野

令和8年度 国家課題対応型研究開発推進事業 原子力システム研究開発事業 選定課題

一般課題型(大規模チーム):計1課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
1 次世代シビアアクシデント解析コードZELOSSAの開発 高田 孝
[東京大学]
早稲田大学、電力中央研究所、日立GEベルノバニュークリアエナジー株式会社、アドバンスソフト株式会社 本研究は、革新軽水炉及び小型軽水炉(以下、次世代軽水炉とする)を対象に、シビアアクシデント(SA)の事象進展を一貫して評価できる国産解析コードZELOSSAを開発するものである。SA時安全評価コードは、我が国においても研究用コードが存在するが、安全評価は米国製コードに頼っており、いずれも一連の事象の解析に長い計算時間を要し、かつ計算の異常停止が発生しやすい。また、次世代軽水炉の設計に資するためには、新たな受動的安全系、炉内の局所閉塞、下部ヘッド破損後のデブリ移行、格納容器内の水素・放射性物質挙動等の3次元挙動の評価が必要であるが、既存のコードは、数十年前の技術を基盤としており対応に難点がある。既存知見を継承しつつ、3次元熱流動連成、高速・安定計算、拡張可能な構造を備えたコードを整備し、実機条件を模擬した妥当性確認まで行う。開発したコードは、参加機関に無償で配布され、次世代軽水炉の安全評価に用いられ、実用化される。プロジェクト終了後には東京大学を中心としてユーザー会を結成し、利用技術の向上、保守改良を長期的に行っていく。合わせて、我が国に不足している、原子力安全解析コード開発の技術者を10人以上育成する。

【追加の研究概要】
基本の研究の中では、MELCORと互換性のあるコードを作成し、計算の高速化と3次元熱流動解析機能を組み込んで次世代軽水炉のSA解析の基盤技術を確立する。追加の研究では、開発コードの発展性を見据え、コードの信頼性、適用範囲及び利用準備の観点で必要となる追加モデルの組み込みや、関連する妥当性評価を拡充する。具体的には、追加するモデルや妥当性評価の優先順位を本研究の開発委員会で検討し、モデルの組み込みおよび妥当性評価の拡充を行う。追加の妥当性評価では、次世代軽水炉の安全性評価として重要となる3次元挙動を中心とし、少数の解析モジュールを対象とした分離効果試験解析(少数の解析モジュールに限定した機能確認解析)、および多くの解析モジュールを用いた、相対的に規模の大きい総合試験解析の両者を相補的に組み合わせた検証解析を実施する。

一般課題型(異分野連携):計3課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
1 高温ガス炉を対象とした物理×機械学習による統合耐震性能評価基盤の構築 糸井 達哉
[東京大学]
筑波大学、日本原子力研究開発機構、大成建設株式会社 本研究は、計算科学と科学機械学習(scientific machine learning ; SciML)を活用し、地盤から炉内構造物までを統合的に扱う耐震性能評価基盤の構築を目的とする。具体的には、まず地盤・建屋・機器・炉内構造物を一体的にモデル化した高忠実度非線形解析モデルを整備する。次に、地盤不均質性を空間統計に基づく三次元確率場として表現し,地震動の散乱現象を考慮した現実的な入力地震動を生成する。さらに,高忠実度解析結果に基づく低次元化モデル(ROM)を構築することで、多数回解析を可能とする設計時の仮想評価基盤技術(設計支援型デジタルツイン)を実現する。これらの要素を統合し、安全性・運転継続性・復旧性からなる性能指標体系を定義するとともに、確率論的地震リスク評価(PRA)から得られる情報を活用することで、設計変数の変更が性能に与える影響を定量的に評価可能な、物理と機械学習を融合した耐震性能評価手法を確立する。

【追加の研究概要】
硬質地盤における空間的不均質構造を実観測に基づいて同定し、三次元確率場モデルの構築手法の妥当性を検証する。具体的には、音響トモグラフィにより取得した波動データに対して逆解析を適用し、地盤の弾性特性分布および不均質構造を推定する。さらに、得られた不均質構造に基づいて空間相関を有する確率場モデルを構築し、地震応答解析への適用を通じて、観測・同定・モデル化から評価に至る一連の手法の妥当性および適用性を体系的に検証する。また、実用高温ガス炉を対象とした確率論的地震リスク評価(PRA)モデルを耐震性能設計に直接活用可能な水準へと高度化する。これにより、どの構造部位が全体の耐震性能およびリスクに支配的に寄与するかを定量的に明確化し、設計上の重要部位の特定および合理的な設計判断に資する評価手法の確立を図る。
2 レーザー駆動単発イオン・ルミネッセンスとHVEM-CLの融合による原子力材料の初期欠陥ダイナミクス解明 榊 泰直
[量子科学技術研究開発機構]
九州大学 本研究は、原子力材料において照射直後に生じる初期欠陥の生成、電荷状態の変化、再結合および安定化の過程を解明し、耐照射性発現機構の本質的理解につなげることを主目的とする。この目的の達成に向けて、点欠陥由来の信号を直接捉えることのできるルミネッセンス計測を中核的診断手法として用いる。具体的には、世界的にも未だ実現されていないレーザー駆動極短パルスイオンによるルミネッセンス計測(LD-IL)を実現するとともに、既存の超高圧電子顕微鏡を用いたルミネッセンス計測手法(HVEM-CL)を併用し、両者の結果を比較することにより、電子照射下で生じる孤立フレンケル欠陥過程と、イオン照射下で生じるカスケード損傷の初期過程との差異を体系的に明らかにする。これにより、照射後の残留損傷の観察のみでは到達困難であった初期欠陥分岐の理解を前進させ、耐照射性に優れた材料設計および新規材料探索の基盤知見を創出につなげる。

【追加の研究概要】
追加の研究では、基本計画で得られる知見を原子力材料における初期欠陥科学の一般化へ発展させるため、照射条件および診断手法の拡張を図る。第一に、陽子ビームに加えて鉄等の重イオン高フラックス照射の実現に挑戦し、イオン種の違いに起因するカスケード損傷形成過程の差異を検証することで、中性子照射で生じる弾き出し損傷をより現実的に模擬した初期過程研究へ展開する。第二に、ルミネッセンスでは捉えにくい無放射欠陥や局所構造変化を補完するため、レーザー駆動による極短パルスハードX線生成の基礎研究を進め、将来的なイオンポンプ・X線プローブ型その場複合計測の基盤を構築する。これにより、発光を生じにくい材料系に対しても欠陥応答の把握を可能とし、初期欠陥過程の理解を一層深化させる。これらは、量子科学技術研究開発機構に蓄積された重イオン加速およびX線発生の知見を活用しつつ、既存の人材・設備を生かして効率的に推進できる基本計画に並行させて進める戦略的拡張である。
3 核燃料高温プロセスのその場観察及び電顕・放射光等マルチモーダル顕微分析による逆解析との融合研究 大石 佑治
[大阪大学]
東北大学、東京大学、日本原子力研究開発機構、量子科学技術研究開発機構 本研究は、原子炉事故時など核燃料の高温挙動を解明するため、「高温その場観察測定」と「微小領域観察」を統合したマルチモーダル解析を実施する。高温その場測定では、燃料試料を3000℃超まで加熱し、形状変化に加えて密度・粘度等の物性値を取得する。一方、冷却後試料に対しては、SEM/TEM観察およびSTXM、XANES、Bragg-CDI等の先端放射光手法の適用を検討し、微小領域の構造・化学状態を高分解能で解析する。これらの結果を統合し、冷却後組織から高温時の燃料挙動を逆算的に再構築する。本手法ははやぶさ2によるリュウグウ試料解析と共通するアプローチであり、宇宙・地球化学との異分野融合により高度化を図る。最終的に、事故耐性に優れた次世代核燃料設計に資する基盤知見の創出を目指す。

一般課題型(若手):計8課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
1 光共振器増強分光とプラズマ原子化による放射性同位体の迅速分析技術の開発 桑原 彬
[芝浦工業大学]
名古屋大学 本研究は、核燃料物質等に含まれる放射性同位体を高分解能かつ高感度に識別するため、プラズマ原子化と非線形キャビティリングダウン分光(CRDS)を組み合わせた新規分光基盤の構築を目的とする。従来の同位体分析はICP-MS等の質量分析法に依存してきたが、前処理の煩雑さや大型装置への依存といった課題を有する。本手法は原子内の光学遷移に対する非線形光学効果(吸収飽和)を利用したサブドップラー分光に基づく高い周波数選択性(波長分解能)を活用し、化学前処理を大幅に簡略化しつつ迅速な同位体分析を可能とする点に特徴がある。研究代表者は既にCRDSによる同位体識別及びプラズマ原子化の多面的な実証実績を有しており、本研究では2色レーザーによる多段階励起等を応用した非線形CRDSの開発とともに、原子源技術の性能向上を実施し、試料形態に依らない万能型の分光学的原理に基づく新たな同位体分析手法を確立する。

【追加の研究概要】
追加の研究では、通常予算で実施する非線形CRDSに基づく分光基盤技術の開発に加え、高効率な原子化を実現するプラズマ原子源の開発及び実試料への適用実証(ホット試験)を一気通貫で推進し、研究開発を大幅に加速する。具体的には、高効率かつ時間的に安定な原子化を実現するため、DC放電式又はレーザーアブレーション式のプラズマ原子源の開発と性能評価を行い、中重元素に対して再現性の高い原子化を達成する。また、超音速ノズルに結合することでジェット化し、高効率な原子化とスペクトル狭窄化(ガス温度の冷却)を同時に実現し、非線形CRDSのサブドップラー分光性能を最大化する。さらに、放射性物質を対象とした分光測定系の構築、安全管理体制の整備及び測定プロトコルの確立を行い、核燃料物質への適用可能性を体系的に実証する。加えて、取得データの定量性評価および既存分析手法との比較検証を行うことで、本手法の有効性と適用範囲を明確化する。これにより、現場環境での運用を見据えたオンサイト同位体分析技術としての実用基盤を確立する。
2 高圧プール沸騰の可視化計測に基づく次世代炉向け熱流動普遍予測モデルの開発 梅原 裕太郎
[九州大学]
第7次エネルギー基本計画が示す次世代革新炉の実用化に向け、安全設計・熱的余裕評価における限界熱流束(CHF)および沸騰熱伝達率(HTC)の高精度予測は最重要課題である。現状の設計手法は炉型・流路形状ごとのモックアップ試験と経験相関式に依存しており、炉型変更のたびに大規模試験が必要となる構造的課題を抱えている。本研究では、高圧対応(最高4MPa)透明伝熱面を有する独自のプール沸騰試験装置を用い、高圧環境下における気泡群構造・気泡下液膜挙動をリアルタイムで定量可視化計測する。0.1〜4MPaの広圧力範囲にわたる系統的データベースを構築し、圧力依存性を支配する物理メカニズムを解明する。これにより、炉型・体系形状に依存しない普遍的なHTC・CHF予測モデルを構築・実験検証し、設計コードへの適用に向けた基盤データと予測手法を提供する。本成果は大規模モックアップ試験の省略による開発コスト・期間の大幅削減に直接貢献する。
3 AI駆動による気液二相熱流動の物理情報モデリングと安全予測 周 文
[東京大学]
本研究は、脱炭素化とエネルギー安全保障を支える先進原子炉の安全性向上に向け、気液二相熱流動の中核課題である臨界熱流束(CHF)前駆現象の観測・解明・予測を目的とする。CHF発生過程は複雑で、観測データも疎かつ異種であるため、従来の経験相関、CFD、個別AIでは統一的理解と高信頼予測が難しい。研究代表者は、AIによる気泡特徴抽出、生成的データ拡張、PINNsによる二相流再構築、CHF予測に関する研究実績を有する。本研究では、これらの基盤を発展させ、流動沸騰過程の画像信号・熱流動情報を統合したマルチモーダル実験データ基盤を整備するとともに、幾何認識型Physics-Informedデジタルツインによる連続場再構築と、クロスドメインCHF予測モデルによる条件横断的な安全診断を接続し、複雑二相流の前駆挙動を定量的かつ解釈可能に扱う新しい方法論を構築する。これにより、革新軽水炉や小型モジュール炉等における熱流動安全評価と安全余裕評価の高度化に資する基盤を提示する。
4 ヒートパイプ式マイクロリアクター実現に向けた微細構造制御ウィックの創成 西川原 理仁
[名古屋大学]
本研究は、ヒートパイプ式マイクロリアクター(HPMR)の実現に不可欠な高温用ヒートパイプの高性能化を目的とし、その中核要素であるウィックの飛躍的性能向上に取り組むものである。マイクロリアクターは、離島・遠隔地・災害時電源や宇宙開発における高信頼エネルギー源として期待されているが、2MW級HPMRでは1本あたり1.8kWの熱輸送を担うヒートパイプが必要とされ、従来理論を大きく超えるキャピラリーパフォーマンスが要求される。本研究では、研究代表者らが独自に考案したバイポーラスフィルム(BPF)構造をウィックとして適用し、流動抵抗と毛細管力のトレードオフを構造的に解消する新概念ウィックの成立性を追究する。数値シミュレーションと実験を組み合わせ、理論限界突破の実証を図るとともに、HPMRへの適用可能性を明らかにする。得られる成果は、原子力分野における高信頼熱輸送技術の確立に貢献するだけでなく、半導体冷却や再生可能エネルギー利用など幅広い分野への波及が期待される。
5 次世代軽水炉使用済燃料の輸送・貯蔵・再処理に資する臨界安全評価基盤の整備-日本版燃焼度クレジットの提案と実装に向けて- 藤田 達也
[北海道大学]
日本原子力研究開発機構、電力中央研究所 本研究は、次世代軽水炉使用済燃料の輸送・貯蔵・再処理の合理化に資する臨界安全評価基盤を整備するため、その中核として日本版燃焼度クレジットの提案と実装に向けた技術的根拠の構築を目的とする。主な対象は輸送・貯蔵兼用キャスクとするが、得られた知見を再処理にも資する形で取りまとめる。
次世代軽水炉燃料では、高濃縮度化・高燃焼度化に伴い、新燃料と使用済燃料の反応度差がより一層大きくなるため、従前の新燃料仮定に依拠した臨界安全評価では現実との乖離が大きく、非合理的なものとなる。そのため、使用済燃料の安全かつ合理的な輸送・貯蔵・再処理には、燃焼に伴う反応度低下を適切に取り込んで評価する燃焼度クレジットの整備が不可欠である。
そこで、核種組成計算・臨界計算に探索・最適化アルゴリズムを組み合わせて、臨界安全評価の判断根拠を論理的に提示することで、設計・運転条件が従前と大きく異なる小型モジュール炉や同様に高濃縮度燃料が想定されている高速炉・高温ガス炉にも拡張可能な日本版燃焼度クレジット導入の基盤を構築する。
6 新型原子炉の敷地内リプレースを加速させる原子炉内部設備解体に向けた水中移動ロボット技術の開発 矢木 啓介
[茨城大学]
本研究では、新世代革新炉へリプレースを加速させるために、原子炉解体における作業員の被ばく等のリスク低減と効率向上を目指して、水中レーザー工法と水中移動ロボットの組み合わせによる、水中での原子炉内構造物の遠隔解体技術の開発を研究目標とする。目標達成に向けた課題として、市販のレーザーヘッドを水中で使用可能とする耐圧モジュールの開発と、水中移動ロボットの位置と姿勢の制御性能をレーザー切断作業の実現に至るまで向上させること、の2点を挙げる。機構設計と流体外乱を含む詳細なモデリングに基づく制御系設計によって、レーザーヘッドを搭載した水中移動ロボットの超高精度な位置姿勢制御を実現する。水中移動ロボットでの実現性と二次廃棄物の低減を両立させた水中レーザー切断条件を見出し、これに基づいて生成される制御目標軌道を実際にロボットで実現できることを示すことで、原子炉内構造物の遠隔解体技術の概念実証を得る。
7 次世代革新炉等の新技術に対する動的PRAを活用したリスク情報活用基盤の構築 成川 隆文
[東京大学]
日本原子力研究開発機構、電力中央研究所 次世代革新炉等の新技術の開発は、エネルギー安全保障と脱炭素化に資する重要課題である。これらを安全に社会実装するには、設計から運用に至る各段階でリスク情報を活用し、多様な新技術に対して安全評価の一貫性と合理性を確保することが重要である。一方、新技術は運転実績が限られるため、従来の確率論的リスク評価(PRA)のみでは、安全上重要な事象進展を十分に捉えにくい。受動的安全機能等の新技術の特徴を踏まえ、幅広い事故シーケンスの探索が重要となる。これに対し、シミュレーションを活用し時間依存性を含めたリスク評価が可能な動的PRAは有力な手法だが、新技術に適用するための技術・活用基盤は整っていない。本研究では、新技術を対象に、動的PRAを意思決定に活用するための方法論を開発するとともに、動的人間信頼性解析を含む実践的な動的PRAツールを開発し、新技術へのケーススタディを通じてその有効性を検証する。これにより、多様な新技術に対して安全評価の一貫性と合理性を実現するリスク情報活用の技術基盤を構築する。
8 多価イオン分光による新しい同位体識別原理の探索 木村 直樹
[核融合科学研究所]
本研究では、高階電離した原子、すなわち多価イオンの分光を用いる新しい同位体識別原理の開拓を目指す。中性原子や一価イオンを対象とする一般的な分光測定では、超微細構造や同位体効果などの原子核構造に由来する効果は微小であり、光学的同位体識別には高分解能レーザー分光が不可欠である。一方、多価イオンではこれらの効果は顕著に増大し、時には発光スペクトルからも核情報が直接読み出せる。最近研究代表者らは、小型プラズマイオン源にパルスレーザーや高分散分光器などの簡便な分光装置を組み合わせ、ヨウ素やニオブなどの多価イオンの超微細構造を分光観測することに成功した。本研究では、この既存技術の分解能・信号強度を増大させ、同位体識別が成立する条件を定量的に明らかにする。さらに、複数の同位体を有する塩素などを対象に、本手法を用いた同位体識別が可能かどうか、実際に分光実験で検証する。これによって、従来は大型装置や複雑な化学分離に依存していた核種分析に対し、光学的に核種識別を行う新たな手法としての展開可能性を示す。
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